大企業を退職する理由①
大企業を退職することを決めました。
理由は、2つあります。
1. 自分の会社が世の中で必要とされ続けると信じられなくなったこと
2. 自分の15年後、45歳を想像したときに本当になりたい自分になれる気がしなかったこと。
今回は1.について書きます。
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1. 自分の会社が世の中で必要とされ続けると信じられなくなったこと
私が在籍している大企業は、それはとてもとても古くからある、歴史のある伝統的日本大企業です。
提供している商品も、人間が現在のような高度な資本主義経済を発展させるために不可欠で[あった]商品であることは間違いないです。
売上利益共に東証一部上場企業として胸を張れる数字ですし、ブランド力も抜群です。
社員の平均給料も高く、職場もホワイトです。
しかし、前述の[あった]という表現で強調している様にそれは少しずつ過去のものになりつつあります。
理由は2つあります。
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一つ目は技術革新についていけていないこと。
世の中は技術革新で変わっていきます。
21世紀の現在、馬車を日頃の足として使っている人はいないでしょうし(少なくとも先進国では)、GPSの代わりに羅針盤をつかって航海している船も無いでしょう。
ワープロで文章を打つ人もいなければ、フィルムを使って写真撮影をしている人はごく少数です。
いま在籍している会社の主力商品はそう遠くない未来に羅針盤となる可能性が高い。
そして、残念ながらGPSの開発をしているわけでは無いのです。
今後長い間人々に必要とされる商品を提供し続けるためには、同時に今まで培ってきた過去の技術を捨てる事を意味します。
過去の技術とはすなわち、過去の技術を持った人や部署です。
一切の販売をネット上で行うことにすれば販売員も販売拠点も不要となります。
技術者や販売員のみならず、管理職や役員にも言えることです。
ITをフル活用したプロジェクト管理が出来ない上司は不要であるし、顧客への対価という成果にコミットできない社内政治のみに興味がある役員も不要です。
そういう変化はイコール、彼らの職を奪うことになります。
しかし本来、会社の存在意義は、社会に必要とされるものを提供すること。それのみです。
雇用創出や地域活性も企業が担う社会的役割に変わりは無いのですが、それらは会社が存在する意義ではなく、会社があることの副作用です。
そこを認め、自らが自分の組織を破壊して変化することが出来ない会社は世の中には不要なのです。
残念ながら私の会社はそういう会社ではありません。
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もう一つは日本企業(特に製造業)の国際競争力の優位性低下です。
アジア極東の小さな島国である日本が、かつて世界第二位の経済大国となれたのは世界近代史を振り返ってみてもとても特殊な例だと学びました。
理由は、野口悠紀雄氏や藻谷浩介氏が指摘している様に、
・戦後の焼け野原からの高生産性体制
・人口の増加による内需と生産力の増大
・アメリカのサポートや戦争特需の発生
・そして、日本人の勤勉性 です。
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数ある日本企業の中でも特に世界に誇れる産業が製造業であったことに疑いの余地はありません。
Made In Japan がブランドとなっていた時代です。
しかし、昨今、日本企業の国際競争力の低下に関しては多くを語らずとも数々のメディアやブログ、各商品の世界シェアを見れば明らかでしょう。
なぜなら上記の競争優位性のうち、残るは勤勉性のみだからです。
私が所属している会社はどうかというと、残念ながら全く同じ状況です。
戦後の高度復興で業績を急拡大させ、世界中で愛される商品をたくさん提供してきました。
しかし他の伝統的日本の製造業と同様、韓国中国を始めとするアジアの国々にシェアを奪われ始めています。
それもそのはずです。 技術や商品の陳腐化が進み、極論を言えば誰でもどこでも作れる商品を、わざわざ高賃金を支払わなければ雇えない日本人が作リ続けているのですから。
例えば、石油を買う時に、わざわざ新潟産の石油を求める人はいないでしょう。(あまり知られていないかもしれませんが日本でもごく少量ではありますが、石油は採掘できます。)
アラブの産油国から、水よりも安い値段で原油を調達すべきです。もちろんそれらの品質も問題ありません。
過去、戦後の高度成長時の仕事の進め方や事業戦略は全く通じないということを理解し、今の時代にあった戦略を組めていない大企業は、東芝やシャープの二の舞いになること間違いないでしょう。
私は自分の会社を愛していますし、頑張ってほしいと思いますが、こういった時代の変化に振り回されているように見えます。
原因は、高度成長期に経験した成功体験を引っ張り続けている役員による会社の主導という体制が変わっていないことが一番大きいと感じています。
東芝やシャープの様に破産直前まで追い込まれてから変化が始まるのではなく自ら変わることを信じています。
※下の本は、変われなかった東芝を去った大学教授の本です。
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ここで間違ってはいけないのが、全ての大企業が同じ状況であるとは言っていないということです。
例えばアメリカでも同様の課題を大企業各社は抱えています。
電機の巨人GE社は創業時の主力事業である電球の製造をやめました。
化学の巨人デュポン社も同様にナイロンの製造を子会社の事業としています。
何年も前にIBMがパソコン事業をLenovoに売った事も同様です。
日本企業でも、例えば、富士フィルムはフィルム製造会社から医療、産業機器の会社に脱皮していますし、ソニーもエンターテイメント事業から画像センサー技術を生み出し、世界中で利益をあげています。
製造業だけでなく、例えば三菱東京UFJ銀行は日本製造業の発展だけでは利益が出せないと早くから理解し、リーマン・ショック時に海外の金融機関を買収し海外売上比率を高めています。
必要なことは、とにかく市場に価値を提供し続けられる会社であり続けるために、変化を恐れずに起こしていけるかどうか。
この1点のみです。
そしてその前提として考えなくてはいけないことが、日本企業だけが世界に提供できる価値、すなわち日本企業で有ることの優位性を見極めることです。
(今回は書きませんが、日本が持っている優位性を活かした会社に転職します。)
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さて、前置きが長くなりました。 端的に、私の会社は上記の2点を持った大企業です。
斜陽となりつつある商品を戦後復興のノリで続けている。わけです。
「そういう会社でも給料がもらえて安定しているのであればいいじゃないか。」 そう思う方がかなりたくさんいるから、誰も大企業をやめないのでしょう。
そして、今の60歳以上の人たちは、成長時期に大企業で働いていたわけで彼らに大企業の労働環境が魅力の無いものでは無いという考え方は全くありません。
でもそれはいつまで続けられるのでしょうか。
定年の60歳まで自分を養ってくれるのでしょうか。
今の社会保障制度と同様、旧世代の人のための、旧世代の考え方に基づいた仕組みはいずれ破綻します。
そしてその破綻が目に見えている状況でその中に居続けることがどれだけ夢の無いことかは、今の我々の世代は痛いほどわかっています。
しかし私は、できれば
・既得権益を守り
・会社の上層部の高年齢の旧世代の技術や考え方を持った社員の高い給料を稼ぐために
・世の中の変化には目を瞑り
・今までの成功体験を信じ、少しずつ衰退していく大企業で
・挑戦よりもミスをしないことを重視する仕事
を今後30年以上し続けるという状況を避けたいと思いました。
50歳になって、世の中から肩たたきに合うのではなく、70歳でも世の中に必要とされ続ける人でありたいと思ったのです。
私はワガママなので、ご飯を食べられて妻子を養っていけるだけでは自分の人生を満足出来ないのです。
今の60歳台の方々が経験したような、どんどんと世界を変えていくような日本企業で働きたいと思いますし、自身も会社も大きく成長できるような環境でワクワクしながら働きたいと思ったのです。
以上が、転職の動機の根幹をなす考え方です。