考えて行動するために。書評:デフレの正体/昭和史 戦後編/里山資本主義

 

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

 

 

 

昭和史 戦後篇 1945-1989 (平凡社ライブラリー)

昭和史 戦後篇 1945-1989 (平凡社ライブラリー)

 

 

 

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)

里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)

 

 

 

■最初に■

2018年が始まりました。

本年もよろしくお願い致します。

 

日が空いてしまいましたが、今年1つ目のエントリは私が最も影響を受けた3冊の本のご紹介とその本を読んで私自身がどう考えて行動したのか。をご紹介します。

 

長い文章です。

しかし人生と言うのは、たった三冊の本と自分の考えで変えていけるというのを証明した文章です。

 

・本の概要

2010年時点の日本経済の問題点を人口の波という観点で説明している、デフレの正体と1945年8月15日から1972年までの沖縄返還までの第二次大戦後の日本の歴史を振り返る、昭和史 戦後編。この2つの日本という国を語っている本は、一見すると前者が日本の経済を、後者が日本の歴史を説明しているようにみえるが、その2つの本はそれぞれが違った形で、現代を生きる我々日本人に、今後の日本をどうしていくのか?と疑問を投げかけている。

 

・戦後日本の成長

               戦後、日本は近代経済史上最大の幸運に恵まれ、高度経済成長を遂げた。敗戦国というレッテルに隠れ、国際社会の中での役割を放棄でき、経済成長に没頭できた。アメリカ株式会社の極東アジア子会社として存分に経済活動に勤しんだ。その結果、高度経済成長時代を含み、名実ともに先進国の仲間入りを果たす。そんな時代的、国際情勢的な利点と重なる形で、ここでもまた戦後、敗戦後という状況が日本を支えた。

一つは団塊世代を始めとする、人口ピラミッドの典型的な成長途上国の形。

もう一つは焼け野原となり、イチから工場を作れたという点。

 

前者は消費/生産両面で一番の活躍をする15歳から60歳までの生産年齢人口の爆発的な増加となり、内需、外需双方にとって経済成長を推し進める直接の要因となる。

後者の焼け野原からの再起という点は、その当時の最新鋭のメソッド、機械を導入し、他国に比べ高生産性を誇る工場を数多く設立出来たこと。すなわち、生産の絶対量と生産性を非常に高く設定できた。

 

・成長・継続の限界

               この非常に単純かつ幸運な状況が合ってこそ、今の日本は出来上がった。そして誰の目に見ても明らかなように既にその状況は日本のどこにも存在しない。つまり、今後の日本は今までの継続では成り立たないということである。

デフレの正体では、今後の日本が立ち行かなくなるという点に対して、こうすれば良いのでは無いかという提言が少しだけ書かれている。まずは、日本の産業の中心に観光業を置くこと。これにより外貨を稼ぎたくさんの雇用を生む。そのために必要なこととして、日本の良さ、日本が世界誇るべきものを再度認識し直して、整えていこうという。というものである。

 

・次の一手

なぜ観光業が今後の日本の経済を支える根幹になりえるのかという説明はここでは割愛し、日本の良さを再認識しマネタイズしていくという活動に、私はとても興味がある。同年代の人であれば誰もが考えたであろうどんな仕事をしていくか。という回答の一つになりうると思うのだ。古くからの考えに沿えば、定年まで勤め上げられる会社や廃れない技術や経験を積みたいと思うだろう。誰も食いっぱぐれたくなく、誰もリストラされたくないからだ。その前提に将来に世の中から必要とされるものを提供できる会社、業界、人はなんだろうと考える。その考え方の根幹は日本で、もしも死ぬまで生きていくとすれば、その社会はどんな変化を辿っていくのだろうか。という予測なしでは不可能である。要するに日本が今後、世界に向けて提供できる価値を見直そうということだ。

 

・勝負を捨てることが出来ない理由

話は少しそれるがデフレの正体の著者藻谷浩介氏は日本人にとって、日本という国は楽園だという。ロサンゼルスに住んでいる私にはとても納得できる。なぜなら、日本語が通じ、日本食が食べられ、安全で何よりも日本的な文化があるというのがどれだけ居心地が良いものか。。。これは私自身が日本を離れて強く実感したことである。だからといってロサンゼルスが悪い場所だと言っているわけでは無いし、実際にかなりの数の日本人は外国に在住しているのも事実である。ただし、日本がだめだから他の国で暮らそうという選択肢は限りなく現実性が低い。一番の理由は言語である。日本語を使える日本以外の国は存在しない。一方アメリカには多数の外国人が移住しているが、英語が共用後であるということが移住し易い一番の理由だろう。フィリピンやインド、もちろん英国やカナダ、オーストラリアなど、言語が同じということがどれほど移住のハードルを低くするか。それは沖縄に旅行に行くこととさして変わらない感覚であろう。

すなわち、今後人口の減少が続くと言われている日本であるが、日本という国に住み続けたい、日本という国が良いという顧客が1億人-8000万人程度は存在し続けるということである。ここで言いたいのは、過去を振り返り、未来を見た時、日本はもうだめだと言って日本を捨てられるかといえばその選択肢は現実的ではないということ。つまり、住んでいる人々みなで何かの策を考えていかなくてはいけないのだ。

 

・豊さを再定義

 ここまで、今の経済の枠組みの中で、日本が今後も経済的に潤ったままでいるためには何か、海外への売り物が必要だという話をしてきた。ただし、ここで根源的な問を一つ藻谷さんは挙げる。「本当に今のマネー資本主義の中での強者を目指すべきなのか?」つまり、現在、大多数の人に正しいと信じられているお金をたくさん効率よく稼ぐことが大切、という概念自体に疑いをかけたのである。これは藻谷さんの「里山資本主義」という本で詳しく語られている概念だが、おしなべていうと、幸せの定義を見直し、お金だけが全てでは無いということを再認識しよう。ということである。今までも何回も何百回も語られてきたであろう、お金だけが全てではない。という考え方。またか、と思ってしまうキーワードだが、里山資本主義の概念は、お金の代わりに自然を資本にして生きていこうという考え方である。例えば、電気、ガスをなくそうと言っているのではなく、電気、ガスを化石燃料ではなく、木材の廃材を使ってバイオマス発電で賄おうという試み。お金を出して食料を全て買わなくても、自分の土地で自分達が食べられる分の食料を持久していこうという試み。そうすることで、マンハッタンで発生した金融危機の影響に生活の全てを左右される不安を少しでも取り除けるのではないかという提案である。この考え方はデフレ脱却、日本の経済にさらなる発展を。というプロジェクトを必ずしも直接的に推し進めるものでは無いというのは明らかである。ただし、間接的に、日本人の精神的豊かさが増し、不安が少しでも取り除かれることで、過剰な保険や貯蓄が軽減され、回るべきお金が回り始める可能性もあるため、真っ向から貨幣経済に対立するものではない。

 

藻谷氏は決して、文明を放棄して自然に戻ろうというNGL(ハンターハンターより、分かる人のみ納得してください)的な生活を提案しているわけではなく、資産分散をしていきましょうという提案です。あまり考えにくいことであるが、日本円の価値が暴落する可能性も大いに有り得る。例えば、現在1ドル110円程度の為替相場が180円くらいまで円安に進むことも大いに考えられるであろう。

為替相場はその国の外貨を稼ぐ力を反映している。すなわち輸出産業、車や電機等が海外で売れなくなるに連れ日本円の通過価値は下がっていく。例えばスイス。スイスの最低賃金は2,500円である。これはスイスが海外に対して価値のあるもの、正確には付加価値の高いものを提供し続けている証拠である。観光はもちろんのこと、高級時計や金融サービスなど、他の国の人がスイスのものを高いお金を出して買いたいと思っているからこそスイスの物価は高い = 実質的な金融価値が高い。ということになる。

補足がながくなってしまったが、日本は高付加価値品を海外に提供し続けることなくして、今の日本の貨幣価値を維持し続けることは難しいということだ。

 

・今、自分にできること

ここからはこれらの情報を得た自分がどう動くかという自分のアクションプランである。いきなり現実的なことが書かれているので世界経済を語っていた今までとはだいぶ規模感が異なるわけであるが、実際自分という小さい個人ができることというのは限られているから致し方ない。

  1. 外貨で運用

→日本円の価値は下がり続ける。正常なインフレが起きていないこの国の通過を運用するというのは下りエレベータを上がろうとしていることに近い。下の2つのグラフは1980年から2017年までの年平均インフレ率とそのインフレ率により通貨価値がどのように変化したかを示している。f:id:djoo:20180105114700j:plainf:id:djoo:20180105114703j:plain

例えばアメリカのインフレ率は1980年時と比較して2017年には28%まで下がっている。これはどういうことかというと、その当時の1ドルというのは今では28セントの価値しか無いということ。

これだけの情報だと、なぜ外貨で運用する必要があるのかという話になる。なぜなら今1ドルを買っておいたとしても、将来的にはその1ドルはどんどん価値を下げていくということだからである。皆様に対しては釈迦に説法になってしまうが、これは逆にいうと、1980年当時、1ドルの価値があるものを持っていて、その価値が市場において変わらないと仮定した場合は、今は0.28の逆数、3.57倍の価値に跳ね上がっていることを示す。

一方で日本はどうだろう。同様の比較をした場合、100円の価値は68円にしか下がっていない。またある金融商品を保持し続けた場合の値上がりは1÷0.68=1.47。つまり、1980年当時に円建てで円の金融資産を保持した人は同様のUSD金融資産を保持した人と比較して2倍以上の差がついていることになる。

これは至極当たり前のことであり、日本にいると意識しない。なぜかというと、日本ではインフレが起こっていない=今のお金は将来もそのまま使える。という文化が醸成されているからである。

 

しかし、一方でもしも、1980年当時に円をドルに変えて、運用し、いま円を買い戻した場合は、そのインフレ率の差(=政策金利)の差を享受できる。いわゆる利ざやが抜けたことになる。

 

※もちろんインフレを起こしているということはそれ相応の金利がつく。下記は2007年から現在までの各国の政策金利を示したグラフであるが、日本は地をはっている赤いライン。一方米国もリーマンショックの影響でガクッと下がっているものの、日本よりも高いことがわかる。

 f:id:djoo:20180105114722j:plain

これらのデータが示すことは、

日本以外の通貨(特に先進国)、金融商品は常に上がり続けている。 → 資本主義経済の前提が守られている可能性が高い。

経済成長が停滞し続けている日本で運用するよりも、経済成長が停滞している日本以外に金融資産を持つことで、利率高く運用し、将来的には日本との利ざやを抜く形で利益を得る。

 

いきなり資産運用の話になってしまい恐縮であるが、我々個人ができる日本を離れずに日本の沈没から脱する方法としては、金融資産を円建てではなく、ドル建てで保持し運用するということが大事であると結論付けたわけである。

 

2.伝統的大企業からの脱出

話はガラッと変わり、仕事の話。私は伝統的な日本の大企業で働いていた。詳細は伏せるが将来、長い目で見たときにおそらく世界に価値を提供し続けられるような会社では無いことは明らかである。その終焉が10年後なのか50年後なのかは断定することは不可能であるが、明らかなのは成長していないという点である。

里山資本主義の観点から見ると、日本で日本人として人生を過ごそうと考えた場合には極力、日本円に頼らない生き方をしていきたい。円の価値が下がるなか、ドル建てでの運用と合わせて進めていきたいのが、将来的に認められるであろう日本の基幹産業をリードしていける経験と知見を持っておくことである。働く意義や生き方などの話に広げてしまうと収拾がつかなくなってしまうのでここでは控えるが、将来も活躍し続けたいと願うのは皆同じだろう。その時を見据えた転職。これが私のとった2つ目のアクションである。

 

■最後に■

 大変長い書評となってしまったが、これくらい色々と考えさせ、そして人生を大きく変えることを厭わないほどの決意を持たせてくれる、それくらい説得力のある本が下記3つの本である。

私自身のチャレンジがどういう方向に進み成功するか失敗するかはわからない。成功してほしいと願う一方で成功の定義自体も変わってくるだろうと思っている。

しかし、考えて行動する。このシンプルで重要かつとても難しいことに私がトライし続けられるのはこの本達に出会えたからである。

 

 

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

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